早期乳がん治療の基本は手術
早期乳がんの治療の基本は、手術によってがんを取り去ることです。手術の前後に薬物療法や放射線治療、緩和ケアなどが組み合わせて行われます。
HER2(ハーツ―)タイプ、トリプルネガティブなどのサブタイプの乳がんに対しては、まず薬物療法から行い、その後手術をすることが増えています。
手術には一般に「温存」または「全摘」と言われる2種類があります
温存とは、がんとそのまわりの組織を切除し、乳房を残す「乳房部分切除術」のことで、手術後に放射線治療が行われます。
全摘は、しこりが大きい、または多発しているときに、乳房全体を切除する「乳房切除術」のことです。全摘のあとは、失った乳房をつくりなおす乳房再建を行うこともできます。一般に全摘の後は放射線治療は行いませんが、腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)への転移がある、しこりが非常に大きいなど、再発のリスクが高い場合は放射線療法が行われます。
また、手術前の触診や画像診断、手術中のセンチネルリンパ節生検などで腋窩(えきか)リンパ節にがんが転移していると診断された場合は、腋窩リンパ節郭清(リンパ節を切除する手術)を行います。ただし、センチネルリンパ節生検で転移が明らかになっても、転移量が多くない場合には、郭清を省略し、代わりに放射線治療を行います。
乳がん手術の比較
乳房部分切除術+放射線療法 (乳房温存手術) | 乳房切除術(全摘) | 乳房切除術+乳房再建 | |
---|---|---|---|
生存率 | 変わりなし | ||
局所再発率(1) | 5~20% | 2.3~18% | |
整容性(※) | 保たれる | 劣る | 保たれる |
薬物療法の必要性 | 変わりなし |
(※)整容性:乳がんの手術後の、乳房の大きさ、形、位置、手術跡などの評価
出典:ピンクリボンと乳がんまなびBOOK改訂版、(1)「乳癌診療ガイドライン」2018年版
監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長)