放射線治療の方法
放射線治療のタイミング
術後の放射線治療は、傷が治り、体が回復するのを待って、1~2か月後を目安に行われます。あまり開始が遅くなると、残ったがん細胞が増殖する可能性が高くなるので、できるだけ早く(術後20週以内)開始することが勧められています。ただし、抗がん薬治療を行う必要がある場合には、全身への再発防止を優先し、通常は抗がん薬治療を先に行います。
ホルモン治療や分子標的治療は、放射線治療と同時に行うこともできますが、現状では安全性や有効性についての結論が出ていないため、多くの場合、放射線治療を先行します。
放射線治療の方法
乳がんの放射線治療にはX線が使われることがほとんどで、1回の照射時間は数分であり、照射中に熱や痛みは感じません。照射位置がずれないように、照射中は同じ体位を続けます。
照射を開始する前に、実際に放射線治療を行うときと同じ体位をとってCTで画像を撮り、その画像によって照射部位や照射法が決められます。照射部位にはマーキングを行いますので、入浴時には擦って消えないように気をつけましょう。
乳房部分切除後の放射線治療
乳房部分切除後の放射線治療では、温存した乳房全体に、1回2グレイ(グレイは放射線量の単位)ずつ、週5回(月曜日から金曜日の連日)×5週間の25回、合計50グレイを照射します。
手術後の病理診断で再発の危険性が高いと判断された場合は、通常1~2週間程度で10~16グレイの追加照射を行います。わきの下のリンパ節に4個以上の転移があったときには、鎖骨上窩(首の付け根)のリンパ節にも照射が勧められます。
乳房切除後の放射線治療
乳房切除術後の放射線治療は必須ではありませんが、リンパ節転移が高度にみられるなど再発リスクが高い場合は、胸壁や鎖骨部のリンパ節に対して、合計45~50グレイを25~30回かけて照射します。
放射線治療は毎日通院で
実際に照射する時間は数分なので、普通は通院で行います。
治療中は月曜日から金曜日まで毎日通院できるようにスケジュールを組みましょう。
照射前後に仕事をすることも可能です。
治療に使う放射線は体内に入って一瞬で消えるので、5週間浴び続けても体内に残ったり、他の人に影響する心配はありません。
監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長補佐)