リンパ節の手術
腋窩(えきか)リンパ節(わきの下のリンパ節)に転移があると考えられる場合 、乳房手術のときに、わきの下のリンパ節を周囲の脂肪組織と一緒にひとまとめにして取り除く、「リンパ節郭清(かくせい) 」 が行われます。切除したリンパ節の情報は、手術後の治療方針を決めるのに役立てられます。
ただ、腋下リンパ節を切除すると、リンパ液の流れが悪くなり、腕が上がらなくなるなど日常生活に支障を来すことも少なくありません。リンパ節に転移がない場合は切除しないほうがいいのです。
リンパ節への転移があるかどうかを調べるセンチネルリンパ節生検
そこで考えられたのが、リンパ節への転移があるかどうかをピンポイントで調べる検査「センチネルリンパ節生検」です。「センチネル」とは見張りのこと。
センチネルリンパ節は、乳がんのがん細胞が最初に流れ着くリンパ節なので、ここに転移がないとわかれば、リンパ節郭清を行わずに済むわけです。2010年から、この検査に健康保険が適用されています。
すでに触診、画像診断、細胞診などでリンパ節への転移が確認されている場合は、センチネルリンパ節生検は行わず、リンパ節郭清が行われます。
一方、最近の研究により、早期乳がんで術後に放射線療法や薬物療法が予定されている場合、センチネルリンパ節に転移があっても、リンパ節郭清を行わないケースが出てきました。
ポイント
最近では、早期乳がんで術後に放射線治療や薬物療法が予定されている場合、センチネルリンパ節に転移があっても、リンパ節郭清を行わないケースが出てきました。
- リンパ浮腫の予防と治療
リンパ浮腫とその症状
乳房手術やリンパ節の手術の後で起こりやすい副作用のひとつに手術した側の腕や手がむくむ「リンパ浮腫」があります。
術後すぐに発症する場合もあれば、10年も経ってから発症する患者さんもいます。リンパ浮腫の主な症状
- 腕や手の太さや大きさに左右さがある。
- 腕や手が動かしにくい。重い感じがする。
- 腕や手が腫れぼったい感じ、だるい感じがする。
- 腕や手の皮膚が硬くなる。
- 腕や皮膚のしわが目立たない。
- 腕の静脈の見え方に左右差がある。
- 腕や手の皮膚を軽く押すとへこみ、戻りが悪い。
リンパ液の流れを妨げないために
リンパ浮腫はリンパ液の流れが悪くなり、リンパ液がたまって起こるむくみです。腕や乳房から心臓に向かって流れるリンパ液の通り道だった、わきの下のリンパ節を切除したために、流れづらくなったリンパ液が腕にたまってしまうのです。リンパ液の流れを妨げないために、日常生活で以下のことに気を付けましょう。
炎症からリンパ浮腫を起こさないために
手術した側の腕は、リンパ節を取っているために細菌に感染しやすくなっています。
炎症からリンパ浮腫を発症することもあるので、ケガや虫刺されには気を付けましょう。リンパ浮腫を予防するポイント
スキンケア
- 入浴時は石けんやボディソープを泡立てて優しく洗うようにしましょう 。
- 入浴後はしっかりと保湿を行い、皮膚の乾燥を防ぎましょう 。
- けがをしないようにこころがけ、ケガをしたらすぐに水で洗いましょう 。
- ムダ毛の処理は慎重に行いましょう 。
- 虫に刺されても掻き破らないように気を付け、痒み止めを塗るなどして肌を守りましょう 。
その他
- 肥満はリンパ浮腫発症の要因になり得ますので注意しましょう 。
- 疲労の残らない範囲で腹式呼吸や肩まわりのストレッチ、ウォーキング等を日常生活に取り入れましょう 。
- 重たい荷物は左右交互に持ったり、休憩をはさみながら負担を軽減できる工夫をしましょう 。
- 長時間作業をする時は、途中でストレッチを取り入れるなどして疲労をためない工夫をしましょう 。
- 皮膚に食い込むようなサイズの合わないブラや袖ぐりのきつい衣類は避けましょう 。
- サウナでの温冷浴は体調が良くない時は避けましょう 。
- 過労や睡眠不足になるとむくみがでやすく、免疫力も低下するので、無理をせず十分な睡眠をとりましょう 。
むくみが軽いうちに治療を
むくみの症状に気づいたら、早めに治療することが必要です。
早い時期から医師や看護師、療法士に相談しましょう。
治療は以下の4つの方法を組み合わせて行われます。リンパ浮腫の治療
スキンケア
保湿クリームで乾燥を防ぎ、細菌感染から守ります。
リンパドレナージ
医療用リンパ浮腫ドレナージの資格を持つ医療従事者から、滞っているリンパの流れをスムーズにするリンパドレナージを受けます。
圧迫療法
リンパドレナージでリンパの流れがスムーズになったら、弾性スリーブや弾性包帯などを巻いて腕を圧迫します。
圧迫下での運動療法
腕を圧迫した状態で、ストレッチなどを行います。
監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長)
- 術後のリハビリテーション
リンパ浮腫予防のリハビリは、無理のない範囲で継続的に
手術後に発症するリンパ浮腫や、腕や肩の動かしにくさを予防するため、リハビリテーションを行います。
リンパ浮腫予防のリハビリは手術後まもなく始めて、無理のない範囲で継続して行うことが大切です。
手術後3か月以上継続してリハビリテーションを行った患者さんは、 術後6か月経っても肩関節が動かしやすく、リンパ浮腫が増加しないという研究結果もあります。
退院後も、日常生活の中で腕や肩甲骨周辺を大きく動かしたり、ストレッチを続けましょう。リンパ浮腫を予防するリハビリテーション
指やひじを曲げ伸ばす運動(手術翌日から)
最初の数日は無理をせず、ベッド上でできる運動を行う。

手術側の手をじゃんけんポンの形に開いたり閉じたりする

ボールを握る

指を一本ずつ折り曲げる

ゆっくり肘を曲げてみる。肩関節は動かさないよう、ひじの関節から先を動かす。
腕や肩関節を動かす運動(手術1週間目以降)
腋窩リンパ節郭清をした場合や手術でドレーンを入れた場合は、ドレーンを抜いたあとリハビリテーションを始める。

椅子に座って両手を前で組む

体は前を向いたまま、手術側の腕を健康な腕のほうへゆっくり引く

両手を肩の高さに上げて水平に伸ばす

その状態から前で交差。このときひじが曲がらないようにする
壁のぼり運動(手術2週間目以降)
壁を使った運動で本格的なリハビリテーションを始める。

健康なほうの腕を上に伸ばして壁に目印をつける

手術側の指先をゆっくり壁に沿って上げる。どこまで動かせるか壁に目盛りをつけるとよい

息を吸いながらゆっくり両腕を上げ、吐きながら肩の位置まで降ろす

壁に対して横向きになって行う
日常生活のなかで行う
退院してからも日常生活でできるリハビリテーションがあります。リハビリをしないと腕が上がりにくくなってくるので、術後1~2年は続けましょう。

健康なほうの腕を上に伸ばして壁に目印をつける

手術側の指先をゆっくり壁に沿って上げる。どこまで動かせるか壁に目盛りをつけるとよい

息を吸いながらゆっくり両腕を上げ、吐きながら肩の位置まで降ろす
監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長)