乳房再建

乳房全摘手術で失った乳房や、温存手術で変形した乳房を、自分の組織や人工乳房を使って再び作り直すのが「乳房再建」です。
乳房再建の手術は、乳がんの手術を行った乳腺外科医ではなく、形成外科医が行います。
最近では乳腺外科に乳房再建外来を設けている医療機関もあります。

乳房再建のタイミング

乳がんの手術と同時に再建する一次再建と、乳がんの手術を終えてから、術後何年経っても行うことのできる二次再建があり、それぞれ1回法と2回法があります。

一次再建

一次再建は手術の回数を減らすことができ、患者さんの精神的、経済的な負担が減ることがメリットです。
その反面、乳がん治療のことで気持ちに余裕がなく、再建の方法をゆっくり考える時間がありません。医療機関によっては、方針として一次再建を行わないところもあります。

二次再建

二次再建は、乳房を失った後の喪失感や、片方を失ってバランスが悪くなるなど、身体的な不自由を感じる時間が長いなどのデメリットがあります。
一方で、乳がんが最も再発しやすい時期*を乗り越えてから乳房再建を行えるという点で安心感があり、乳房の形などの希望をゆっくり検討できるメリットがあります。

二次再建で、自分で形成外科の医療機関を探す場合は、乳房再建を専門に行っているかどうか、行ってきた再建手術の数、得意とする手術法を確認したうえで、乳房の形や大きさなどの希望に応えてくれる医師を選ぶことが大切です。

乳がんが最も再発しやすい時期
乳がんの再発で最も多いのは、手術から2~3年以内の再発です。
手術後すぐに再発するのは、一般的に増殖スピードの速いがんで、トリプルネガティブのがんが代表的です。
一方で、増殖スピードの遅いルミナールタイプのがんは、再発時期が5年以降となることもあります。

 

乳房再建の方法

乳房再建の方法には、自分のおなかや背中の組織を使う「自家組織による再建」と、シリコン製の人工乳房を使う「インプラントによる再建」、両者併用の3種類があります。
どの方法で再建するかは、乳がん手術の方法、放射線治療の有無、乳房の大きさ、皮膚や組織の状態に加え、本人の体形、ライフスタイル、希望などを併せて検討されます。

 自家組織による再建インプラントによる再建
向いている人

●人工物を体に入れるのに抵抗がある人
●放射線療法をした人
●これから放射線療法を受ける可能性がある人

●体に負担をかけたくない人
●社会復帰を早くしたい人
●入院する時間がない人

再建費用

保険適用(3割負担の場合)で30~40万円
*実際の負担は高額療養費制度の上限まで

メリット

●やわらかく、触ったときに温かい乳房ができる
●正常な乳房と同様に、年齢と共に変化する
●放射線療法後も適応
●免疫反応が起きない

●入れ替えの手術は1~2時間で済む
●体にかかる負担が少なく、社会復帰までが早い
●乳房以外に傷ができない

デメリット

●再建の手術後に腹部や背中が痛み、傷が残る
●手術に4~8時間かかり、約2週間の入院が必要
●体への負担が大きく、社会復帰までに時間がかかる
●将来、妊娠・出産を希望する場合には腹部の皮膚・脂肪を用いた再建は勧められない

●やや硬く、触ったときに冷たい感じがする
●年齢と共に、もう片方の乳房と差が出る
●乳がんの手術で大胸筋が残っていないと適応できない
●放射線療法後は適用が難しい
●経年劣化によりインプラント入れ替えの必要が生じることがある

出典:ピンクリボンと乳がんまなびBOOK改訂版

 

自家組織による再建

自家組織による再建法には、 腹部の皮膚、脂肪、腹直筋の一部を移植する「腹直筋皮弁法(ひべんほう)」、 おなかの皮膚と脂肪を移植して筋肉は残す「深化腹壁動脈穿通枝(せんつうし)皮弁法」 背中の皮膚、脂肪、広背筋の一部を移植する「広背筋皮弁法」 があります。 おなかと背中のどちらの組織を使うかは、乳房の大きさやそれぞれの組織の状態から検討されます。

自家組織による再建法(腹直筋皮弁法)

自家組織による再建法(腹直筋皮弁法)

 画像提供:認定NPO法人乳房健康研究会

自家組織による再建の合併症

自家組織による再建法の合併症として、腹直筋を使った場合は筋肉量が減少して腹壁瘢痕(はんこん)ヘルニア(傷跡から腹腔内の臓器が脱出する症状)を起こす可能性や、
背中の組織を使った場合は移植した筋肉が時間と共に委縮する可能性があります。また、ごくまれに、血流が悪化することで、移植した組織が壊死することがあります。さらに、乳房の傷のほかに、おなかや背中に傷が残ります。(腹直筋を使う場合は下腹部に30㎝くらい、広背筋を使うと15㎝くらい)

監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長)

インプラント(人工乳房)による再建

インプラントと呼ばれる人工乳房を埋め込んで、体に負担をかけずに乳房を再建します。
現在使われているインプラントは、コヒーシブシリコンといって、破損しても中身が飛び出さない安全なもので、感触も自然です。

インプラントによる再建の手順

①インプラントを入れる前に、皮膚拡張器(エキスパンダー)を乳房の大胸筋の下(背中側)に入れます。
②そこから時間をかけて、少しずつ生理食塩液を入れて皮膚を伸ばし、十分な大きさの乳房ができるようになったら、エキスパンダーとインプラントを入れ替えます。
残った皮膚に余裕のある人や、もともとの乳房が小さめの人は、大胸筋の下に直接インプラントを挿入する方法もあります。

インプラントによる再建の手順

画像提供:認定NPO法人乳房健康研究会

※インプラントを入れた後でも、反対側の乳房のマンモグラフィ、超音波検査、MRIを受けることができます。ただし、エキスパンダーには金属が入っているので、エキスパンダー挿入中は反対側の乳房もMRIを受けることができません。

インプラント(人工乳房)による再建の合併症

エキスパンダー挿入中は細菌に感染しやすく、①38℃以上の熱が出る、②胸部が赤くなる、③痛みが出るなどの症状が起こることがあります。
そうなった場合は患部を冷やし、すぐに専門医の診察を受けてください。もしも悪化した場合はエキスパンダーを取り除くこともあります。

インプラントを入れた後は、人工物に対する自己防衛反応として、インプラントの周囲に被膜(コラーゲン繊維の膜)が形成されます。
まれに、この被膜が硬く縮んで「被膜拘縮(こうしゅく)」と呼ばれる現象を起こすことがあります。また、インプラントが回転することがあります。

脂肪注入による再建術

インプラントによる乳房再建で見られる鎖骨下の凹み、自家組織を用いた乳房再建における組織量不足などに対して、脂肪注入(脂肪移植)による乳房再建が行われるようになりました。

ただし、脂肪注入による乳房再建には、「注入した脂肪が壊死を起こす」「局所再発と紛らわしい所見を示す」などの問題があり、専門家による慎重な手術が必要とされます。脂肪注入による乳房再建は、これからの研究課題です。

監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長)

乳頭・乳輪の再建

乳頭・乳輪の再建は、通常、乳房再建手術から6か月くらい経ってから、日帰りや1泊の小さな手術で可能です。

  • 再建乳房の皮膚を盛り上げて乳頭の形をつくる方法
  • 反対側の乳頭の一部を移植する方法
  • 脚の付け根などの皮膚を移植する方法
  • タトゥーで乳輪の色を付ける方法

などがあります。
乳房のふくらみだけを再建して乳頭はつくらないという選択肢や必要な時だけ装着できる人工乳頭・乳輪もあります。また、乳頭温存乳房切除術を行った場合は、自分の乳頭・乳輪が残るので、再建は不要です。

 

監修:相良 安昭(社会医療法人博愛会 相良病院 院長)